第1章 艷めく吐息は火薬の香り

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『この誇り高き竜属のラギさんを、ラギさんをぉ……トカゲ呼ばわりしたーーーっっ! ……んぅぅぅぅ、もー今度という今度は、小娘許さぁぁああぁんっっ!!』 ぶわっ 叫ぶラギから竜気の強風。二人を引き上げたロープをしまおうとしていたボッコの銀髪が大気ごと大きく揺れた。 バヂバヂバヂバヂッッ! ラギの翡翠の長髪に激しく紫電が走る。圧倒的な竜圧がその場に立ち上った。それを目の当たりにする限り、もはや戯れの領域を超えている。 その金と銀の瞳に竜気が宿った。 地下遺跡の青壁がその圧する気配に震え、物陰のネズミが一目散に逃げ出した。 ────『ラギ』は今でこそ、こんな小さなナリをしてはいるが、かつては名だたる国々と対峙した八魔竜の一翼である。 『銀牙金爪の翡翠龍 フェル=ラギス』 今は名を『ラギ』とし、彼女の目的の為クェンたちと旅を共にしているーーー。 『────って、呑気に説明してる場合かよ』 げしょっ 『あぱうっっ?』 クェンの手刀を脳天に受け、その竜気がぷしゅーと霧散する。 『こんな所でケンカすーんーな。また崩落するだろーが。地上でやれ、あと俺の見てねーとこで』 『相変わらず優しいこと言ってるよーで、自分のことしか考えてない発言だにょ。くぇん』
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