第1章 艷めく吐息は火薬の香り

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────この世界には『神雄オデュッセイア』によって遺された『遺産』が存在する。──── 曰く『一つを以って国を動かし、二つあらば王となり、三つ揃わば大陸を征略す』 斯様の如く語られる伝承は決して夢物語の類ではない。 ────事実、公式に現存を確認されている『遺産』は『二十七個』それぞれがセーヴェライ大陸の主軸国によって厳重に管理されている。 遺産による恩恵は多大。 だが、それ以上にその力は『過大』 ────水の神聖都市・アクナポリスは 『無限の水流を讃える龍器(ケィナム・クルトエイア)』と呼ばれる遺産を管理している。が、コレを発見し『管理』する前の神聖都市は、都市とは名ばかりの荒涼とした砂に沈みゆく街であった。 今より300年前に『無限の水流を讃える龍器』が発見され、そして発動して以来、それは今もなお留まることなく、水流を吐き出し大地を潤し続けている。 ────しかし、実際のところは少し事情が違う。 水を吐き出し、都市としての活動を続けているのは事実ではあるが、神聖都市は正確な意味で遺産を『管理』出来ている訳では無い。 正確には『吐き出させることしか』出来ない。 詰まるところ、その『制御の仕方』を知るものがおらず、発動する侭に任せる他はないのだ。 他の『遺産』もまた同じ。 たまたま発動し、偶然に条件が重なって適合しただけ。結果、運良く人の手に落ち着いたものが二十七個。この広大な世界の歴史の闇に消えた幾つかの遺産があろうことは想像に難くない。 また、その犠牲も────だが、その常世の摂理を超えた効果は尋常ならざる価値をこの世に生み出す。 ────そんな『遺産』の一つが、この地下遺跡に遺されているとゆーのだ。眉唾ものだが。 image=510681599.jpg
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