第1章 艷めく吐息は火薬の香り

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ピラピラとアスナが古い紙切れを灯りに透かして見る。漠然とした地図の余白にびっしりと書かれた遥か古い文字が何とはなしに『それっぽさ』をこちらに伝えてくる。 『でも、それってさー。この地図がホンモノだったら、って話でしょ?贋物だったらコレに金貨30枚とかボラれすぎじゃない?』 至極もっともなアスナの意見。 するとクェンの眉毛がへの字に、そして眉間にシワが寄る。あたかも『お前、ホント浪漫ってモンがねえなぁ?』と言わんばかり。 肩越しに語る。 『お前ねえ。そこはホンモノと信じて疑っちゃイカンだろ...逆にホンモノで金貨30枚なら超弩級の破格値。前向きにいこーぜ、前向きに♪』 『……くぇんの『前向き』は後ろに進んでないだけのことが多いんだにょ.……..ふわぁ』 眠くなってきたのか、ボッコの口からは生欠伸。歩く足取りも心做しか覚束無い。 『文句なら遺産見つけてから聞くっ! お前らこれで遺産見つけたら覚えてやがれ!』 『どーせ、いつも通り大した収穫ないパターンでしょ。期待してまーす』 『……挙げ句に崩落で死にかけてたら意味無いにょ。ただの笑い者だにょ』 『あんな崩落は不幸な事故だ!見てみろ、この数百年を経て尚、頑丈なこの壁を。ちょっとやそっと小突いたところでビクともしねーし!』 がんっっ!と、クェンが右手で壁を叩いた。 ……ズズ……ズズズズゥゥゥゥン(きゃーーーっっ) まるでクェンの言葉に呼応するかの如く震える地下遺跡。壁や石柱の割れ目から多足の虫が我先にと争うように這い出ては割れ目に消えた。 『クェン(くぇん)……』 じとー、っとアスナとボッコが疑いの三白眼をクェンに向ける。 『いや、いやいやいやっ!? フツーに考えて今のは俺のせいじゃないだろ!?その前に、ほらっ悲鳴が聞こえたぞ人命だ、いや救命だ。急げ急げっっ』 『あくまでシラを切るつもりか……あざといわねクェン……』 『多分、罪を自分で認めたほーが実刑軽いことを知らないんだにょ。アホだにょ』 『シラを切ってるつもりねえ。ついでにアホ呼ばわりも止めぃ!』
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