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アヤは、ずぶ濡れになってしまった靴をひどく気持ち悪がって、玄関につくやいなや、右足をブルブルさせて、靴を放り出した。「こらこら」と、里子がその靴を並べる。アヤはもう片方は、丁寧に手をかけて脱いだ。そしてドタドタと音を出して廊下を抜けて、リビングに向かった。里子は、アヤの靴を揃えて置くと、気持ち悪い履き心地になっている自分の靴を手で握ってグイッと脱いだ。
里子は、台所に向かいながら、「宿題先に済ませなさいよ」と、リビングにいるアヤに言った。「うん」という返事がしたような気がしたが、それをかき消すように、テレビから、やたら明るいアニメのキャラクターの声が流れてきた。
里子は、食事の準備を済ませると、BGM代わりにつけていたテレビの音量を下げた。丁度夕方のニュースの時間で、しきりに話をしていたベテランニュースキャスターは、口パクになった。
それから、自分の部屋にいるアヤを呼んだ。勉強部屋から「はーい」と、返事がするとアヤは、目をこすりながら食卓のテーブルにやってきた。小学生となると一人で席にちゃんと座れるし、食事の準備もできる。里子は娘が大きくなったなと、実感していた。
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