第1章

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「……ねえ、優しいあなた。私、あなたに会いたくてしかたないんだ。学校でもずっと考えて……早く雨の日にならないかなって」 「オレも……オレだって、君に会いたくて、雨にならないかって毎日考えてる。……部屋にテルテル坊主を逆さにして飾るくらいに、雨になってほしい」 「テルテル坊主を逆さにって……私よりもお兄さんなのに、可愛いことするんだね」 「……ほっとけ」  年齢は聞いたことないけど、彼女は中学生でオレは高校生。歳の差があるようだ。 「……ねえ、なんで私に会いたいの? こうやって優しくしてくれるの?」  答えを口にしたら、もう会えなくなってしまうんじゃないか。そう、思ってしまった。気持ちを口にして、今の関係がなくなる、現実の恋愛でもある話だ。  でも、この不思議な関係が……水たまりに彼女が写らなくなってしまうのが怖かった。だから、今まで言いたくても言えなかった。  でも、もう覚悟は出来ていた。会えなくなってしまっても……探しに行くんだと。だから、気持ちを伝えてしまおうと。 「最初は、恩返しのつもりだった。優しくされた分返すんだって」  オレは、水面の彼女に手を伸ばす。触れられないって解っていても、触れたいから。 「でも……健気に頑張る姿を聞いてたら好きになってた。簡単な男かもしれないけど……君を支えたいと思った」 「……私は、水面に映る私しか見せてないよ? 本当は変な子なのかもしれないよ。悪い子かもしれない」 「全部、受け入れてみせるよ。……オレは、君が好きだ。出来ることなら……付き合いたい。難しいかもしれないけど」 「……私もね? 私も一緒だよ。水面に映るあなたしか知らないけど、私もあなたのことが……好きだよ」  彼女も水面に手を伸ばし・・…ほぼ同時に手が水面に触れた。想像通り、水の感触が伝わって来た。  でも、それだけじゃなかった。  水の感触の先に……温もりがあった。柔らかい感触が……あった。それをもっと感じたくて……手を伸ばすと。 「わっ……!?」  水溜まりに落ちた。どうみても浅い水たまりだったのに、体全体が入って……落ちて行く。  でも、次の瞬間に上っていく感覚に変わって……飛び出した。 「きゃっ!?」  可愛い声がした。聞き覚えのある可愛い声が。  水たまりに入って、濡れた体から水滴が滴る先に……彼女が居る。触れられなかった彼女にオレは覆いかぶさっていた。
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