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「課長、俺やっぱり、行きます」
「は? 行くってどこに?」
「愛する人のところです」
目を見て言えた。進行方向を変えて歩き出す。
「課長は? もうダメになるのよ! よく考えて!」
「考えました!」
「行ってもどうせ許してくれないよ、あの田舎女は!」
課長の声に引き止められる、もう一度振り返って彼女を見た。
「課長......知ってたんですか?」
「そうよ、あの写真は、私があえて、あの女に気がつくようにSNSに載せたんだから」
「な、なんで......」
「それは、あなたの事が......」
言葉に詰まり勢いが止まった、課長がこれほど動揺しているのは初めてだった。
「いいわ、行けばいい、そのかわり、もう出世どころか、クビよ、クビ!」
「すみません、好きな人が......いますので......」
「私だって......」と言う言葉は耳に入ったが、聞こえていないふりをした。
家に帰る時間は無い、会社を出ると全力で走り、タクシーに乗る。ポケットの中で握りしめるチケット、今朝時間ギリギリまで迷ったあげく、持って来ていてよかった――――
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