松森圭 3

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「課長、俺やっぱり、行きます」 「は? 行くってどこに?」 「愛する人のところです」  目を見て言えた。進行方向を変えて歩き出す。 「課長は? もうダメになるのよ! よく考えて!」 「考えました!」 「行ってもどうせ許してくれないよ、あの田舎女は!」  課長の声に引き止められる、もう一度振り返って彼女を見た。 「課長......知ってたんですか?」 「そうよ、あの写真は、私があえて、あの女に気がつくようにSNSに載せたんだから」 「な、なんで......」 「それは、あなたの事が......」  言葉に詰まり勢いが止まった、課長がこれほど動揺しているのは初めてだった。 「いいわ、行けばいい、そのかわり、もう出世どころか、クビよ、クビ!」 「すみません、好きな人が......いますので......」  「私だって......」と言う言葉は耳に入ったが、聞こえていないふりをした。  家に帰る時間は無い、会社を出ると全力で走り、タクシーに乗る。ポケットの中で握りしめるチケット、今朝時間ギリギリまで迷ったあげく、持って来ていてよかった――――
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