第一楽章

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先の欠けた言葉のように 暖炉の内に火は灯り 椅子の上の老女の顔を 淡い影が撫ぜている 机の上には眼鏡が一つ ショートピースの空き箱と 思い付くまま語らいて 時折、仄かに笑みを溢す 切った爪は雑然と 幾つもの躰で横たわり 実在しない星座の空を ジッと窓から眺めている 立ち昇る夢、夢、夢 宙空に絡まり解れゆく 吐息のような夜の夢 最後の一人になってしまった
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