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『流磨さん、なんで怒ってるんですか?』
ミキが研に問いかけた。
『怒ってるんじゃなくて、拗ねているんだろう』
流磨は益々険しい顔つきになって2人を睨んだ。
『やっぱり怒ってますう』
『本当だねえ。昨日は可愛かったのに、リバウンドしちゃったのかなあ』
『え、昨日ミキがいない間に何かありました?』
『うん、流磨ったらね』
部屋の隅にいた流磨がいつのまにかベッドサイドに立ち、綺麗に皮がむけた林檎と、ナイフを両手に掲げて研を見下ろした。
『あ、ミキちゃん、俺の思い過ごしだったみたい、うん、何もなかった、何にも』
流磨はナイフをサイドテーブルに置いて林檎を持ったまま部屋の隅に戻った。
『あ、あれ?流磨くん、それお父さんにくれるんじゃないの?』
流磨は、皮がついたままの林檎を投げた。研は怪我をしていない方の手で林檎をなんとか受け止めた。
『剥きたきゃ自分で剥け』
そう言うと、皮を剥いた林檎を齧り始めた。
『せ、先生、ミキが剥いてあげますね』
『い、いいよミキちゃん、皮付きの方が栄養あるし。あ、欧米人は皮剥かないらしいぞ。なあ、流磨?』
流磨は黙って林檎を齧り続けている。
『あの、ミキちゃんさ、何か飲み物買ってきてくれない?』
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