第1話 謎のレコーダー現る

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「こいつらほんと毎回同じこと言ってるなあ」 オタクって粘着気質だなあと、上から目線で直人はスレッドを眺めていた。その書き込んでいるオタク達も、皆自分が上だと思っている人間だ。大した根拠なく自分が他人より優れていると思っている人間でスレッドは溢れている。そうでなければ実績のある脚本家を糞呼ばわりなど出来ないだろう。しかも、ハンドルネームさえ名乗らない人間がほとんどで、ただ無責任に偉そうな意見を書き連ねている。 その自信の根拠が垣間見られる知識や発想が語られることもあって面白いのだが、彼等と一線を引いておきたい直人は、言いたいことがあっても書き込みをすることは避けていた。書き込みさえしないで覗き見て書いた人間を罵っている方が卑怯だなんて気づきもせずに。 「ふーん、あの新キャラ評判悪いな」 今日の話題の中心は新しく登場した第2のヒーローだった。背中に薔薇の花って昭和の少女漫画か、あれは監督の演出だろ何でも脚本家のせいにするな、等々。それを読みながら直人は独り笑った。 このヒーロー番組を観ていそうな友達はいない。円香に話を振れば矢島翔の賞賛しかしないだろうし、実はあれから毎週観てるなんてことは彼女には内緒だ。独りで笑ったり、相槌を打ったりしている姿は端から見たら寂しくて暗い奴に見えるだろうが、そういう意識も直人にはない。他の話題で盛り上がれる友達はいるし、ヒーロー番組は好きだがオタクではないという自信があるからだ。実際オタクは直人とは桁違いの情報と資料を収集している。それは掲示板を見ていればわかるし、それ程の情熱は持ち合わせていない。それに彼らは恐ろしく細かい所まで番組をよく見ている。 「えっ、いつ?」 今日一瞬ヒロインのパンツが見えそうだったという書き込みを読んだ直人は、検証する為に録画をチェックしようとした。そう、直人は最近一度テレビで見るだけでなくきっちり録画保存している。 「あれ?」 毎週録画に設定しているはずなのに、今週の分がない。今朝確かに放送されていたし、うっかり他の録画予約と重なったりディスクの容量オーバーということもない。 「え、なんで?」 原因を調べようと色々いじっているとバチンと嫌な音がして画面が消えた。一度コンセントを抜いて入れ直してみたが、電源が入らない。
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