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翔はまた笑い始めた。
「わ、笑い事じゃないだろ!」
「ごめん、ごめん・・・」
謝りながらも翔はしばらく笑い続け、ようやく息を整えると、直人に真剣な眼差しを向けた。
「あそこでもし俺が素の山口翔太に戻っていたら、確かに危険だった。コントロールには自信あるけど、ナイフは投げたことないからね。だから木下監督の言ってることは正論なんだ」
直人は息を呑んで、翔の言葉に耳を傾けた。
「ここでは役になりきった方がいい。少なくとも、撮影中は雑念を捨てることだ。そうしないと、危険だ。君も、今の君じゃなくて役の藤崎になりきれ。流磨を助けて共にミュータンス星人に立ち向かう、ヒーローにね」
期待していた翔の情報は、どれも現状から抜け出すのには役立ちそうもなかったが、現状に適応するには、翔の、流磨の存在は心強かった。
直人は、酔った翔のほんのりピンクに色づいた綺麗な横顔を眺めながら、缶チューハイを飲み干した。
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