7人が本棚に入れています
本棚に追加
『はーい、じゃ、そこの自販機行って来ます』
『あ、あの、それ飽きたなあ、何処か別の所で買ってきてくれない?』
『そうですか?いいですけどお・・・じゃあ、コンビニ行ってきまーす』
ミキが病室から出て行くと、流磨は芯だけになった林檎を捨てて研に話しかけた。
『ほんとに悪運が強いな、親父は』
『母さんの愛に守られちゃってるのかねえ』
『はっ、鬱陶しいからこっちに来るなって思われてるんじゃないか?』
研は嫌味を言われても息子に笑顔を向けている。流磨は怪訝そうに眉をひそめた。
『なんだよ、気色悪いな』
『おまえ、俺が死んだら泣いてくれるんだねえ』
流磨はちょっと目を見開いて、顔を背けた。その流磨に向かって、研は続けた。
『昨日言ったことは忘れないでくれ。いつか俺は死ぬ。仮に天寿を全う出来なかったとしても、それは運命だ。どんな状況であれ、おまえに責任はない』
『わかったよ。その代わり、つまらないミスで死んだら許さない』
親子は視線を交わした。微笑むまではいかないが、流磨はいつもより柔らかい目で父親を見ていた。しかし、それは一瞬で、険しい顔に戻って病室のドアを叩いた。ドアの外では買い物に行ったはずのミキが聞き耳を立てていた。
『そこにコンビニがあるのか?』
『ご、ごめんなさいー』
ミキが急いで駆け出すと、画面が変わった。
不安定な音階の音楽が流れる。女王の間だ。
傅く川口、側近と、ムチを撫でながら立っている女王の姿が映し出される。
最初のコメントを投稿しよう!