7人が本棚に入れています
本棚に追加
『大丈夫?ミキちゃん』
『誰かがミキの悪口言ってますう』
と、病室の扉がノックされた。
『はい。どうぞ』
扉が開いた。川口が立っていた。
『先生!』
川口はマスクを握り締めて研に駆け寄った。
『本当に申し訳ないことをしました。あー、こんなに怪我をされて・・・』
『あー、いや、いいんだよ。それより君が無事で良かった』
『自分だけ逃げてしまって、本当に情けないです。こんな大事なものを、お借りしたままで・・・』
川口はマスクを差し出した。研はマスクを受け取り、優しく微笑んだ。
『まあいきなり怪人が現れたら、普通びっくりするだろう。仕方ないよ』
『父に叱られましたよ。大の男がそんな情けないことでどうする、もう一度しっかり修行して来いって。先生、気持ちを入れ替えて一からやり直しますから、引き続きご指導していただけますよね?』
『ああ・・・そうしたいのは山々だけど・・・この状態だからね』
『では、息子さんに、先生に代わって私を指導するように言っていただけませんか?どうも息子さん、私を毛嫌いしていらっしゃるようで・・・』
ミキは研の腕を掴んで首を振った。研はミキを見てそっと頷くと、川口に向き直った。
『あいにく俺の言うことを聞く息子じゃないんでね。直接頼んでくれないか?』
『そうですか・・・ではそうさせていただきます。失礼いたします。どうか、お大事に』
最初のコメントを投稿しよう!