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「何処にいるのかもわからないで、どうやって助けるんだよ」
青木は答えられない円香を見下しながら続けた。
「映宝エンターテイメントもエイホートイファクトリーも調べがつかない。だから餌を置いてみた。今の所釣れたの、あんたと関川だけだけど」
「著作権侵害で訴えられたらむしろこっちの思う壺ってわけです。先生は矢島翔くんや藤崎くんの為に体張って下さってるんですよ」
青木は伊藤の頭を撫でてやりながら円香に問いかけた。
「あんたは不思議に思わないのか?ウチ等はモニターだろ。ってことは視聴者は別に想定されているってことだよ。タナベは、誰が何のために作っているんだと思う?」
そんなこと考えてもみなかった円香が黙っていると、伊藤が代わりに答えた。
「新たに特撮業界に殴りこもうっていう団体ですかねえ」
「それは一番楽観的な回答だな」
ならば誰なのか。円香は態度を改めて青木に尋ねてみた。
「青木さんは違うと思ってるの?」
すると青木は少し考えてから答えた。
「ああ。だけど私にもよくわからない。タナベを作っているのは連れて行かれたスタッフで、話は半分モニター任せだろ?作らせている奴は、何を望んでいるんだろうな。創作活動にはエネルギーが必要だ。喜びとか、悲しみとか、単純な欲求とか。そいつを駆り立てているエネルギーが、ネガティブなものじゃなければいいけどな」
それだけ言うと青木は黙ってしまい、伊藤も何も言わず思い出したように目の前のジュースを飲み始めた。円香もすっかり冷めてしまった紅茶を飲み始めたが落ち着かず、2人に向かって訴えた。
「ねえ、仲間内で分裂している場合じゃないんじゃない?身元のわかる人達は全員集めて、映宝エンターテイメント探し出そうよ」
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