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そして撮影が再開され、直人は再びユニットカーに飛び乗った。戦闘モードになって上空に飛び上がった時、ふと下を見ると撮影現場から少し離れた茂みの影に、あの女の子の姿があった。
(あ、あの子・・・)
直人は一瞬戦っていることを忘れ、気がつくとビルの壁が目の前にそそり立っていた。
「危ない!」
叫び声と共に、流磨が壁の前に立ちはだかった。車は流磨の体に衝撃を吸収させて、そのまま下へ落ちた。落下距離はさほどなく、車も直人も無事だったが、流磨は落下した姿勢のまま倒れている。
撮影スタッフが慌てて集まり、直人も車を降りて流磨に駆け寄った。スタッフに抱き起こされた流磨は自らマスクを取って変身解除したが、苦しそうに腹を押さえた。大量出血ではないようだが、服に血が滲んでいる。
「早く医務室へ運べ!」
監督の怒号が飛ぶ。
「翔!」
翔に駆け寄ろうとした直人は監督に突き飛ばされた。
「馬鹿野郎!こいつは田辺流磨だ。だからおまえを救えたんだ。おまえにも役になりきれと言ったはずだ。撮影はしばらく中止だ。頭を冷やせ!」
田辺流磨こと矢島翔は数人のスタッフに担がれて行き、他のスタッフも撤収し、直人は独りその場に取り残された。
「なんてことを・・・」
直人はその場にしゃがみ込んだ。情けなくて泣けてきた。すると、目の前に人が立った。
「帰りたい?」
直人は顔を上げた。あの女の子が立っていた。
「君はいったい、何者なんだ?」
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