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その頃円香は大学が夏休みに入ったので、連日夜更かしをしてインターネットで情報収集を続けていた。その日も明け方近くにベッドに入り、昼近くまで眠ってだるそうに目を覚ますと、「タナベ」が始まった。円香は一気に眠気を吹き飛ばし、画面に見入った。
まず前回のラストシーンが映し出された。
緊迫して立ちすくむ3人。その緊張に耐えられなくなった藤崎が、睨み合う流磨と川口に割って入った。
『おい喧嘩するなよ、皆一緒に戦えばいいじゃないか』
川口は不気味に微笑んで藤崎を見た。
『お友達は話が分かるようですね。お名前を伺ってもよろしいですか?』
『え、俺は・・・』
『答えなくていい』
流磨が藤崎を制した。川口はクツクツと笑った。
『仕方ない、今日の所は帰りますよ。ただし・・・あんまり邪険にされると、私もあなたを嫌いになりますよ?』
『おまえに好かれる必要はない』
『嫌いになると言ったんです。私は嫌いな人間には容赦しませんよ』
流磨と川口は再び睨み合った。
『では藤崎さん、お元気で』
藤崎に気味の悪い笑顔を投げて、川口は去って行った。藤崎はしばらく呆然としていたが、やがて気づいて言った。
『あいつ、俺の名前知ってたのか?』
流磨は川口が去っていった方向を睨みつけたまま言った。
『藤崎、あいつには気を許すな』
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