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『行こう、藤崎。急がせて悪かったな。疲れただろ』
『あ、いや・・・』
『おーい、流磨ー』
藤崎は流磨の後を追いかけながら研を振り返った。
『いいの?親父さん呼んでるよ』
『放っておけ。それより給油しないと。今日はもう、工場へ運ぶのは無理だな。明日の朝、ウチへ来てくれ』
『わかった。親父に話して、協力してくれそうな人に声掛けておくよ』
『ああ。頼むよ』
流磨と別れて、藤崎は1人になった。静かな路地に差し掛かった所で、藤崎は数人の男に取り囲まれた。
『何の用だ?』
『さあねえ。俺達はあんたを捕まえてくるように頼まれただけだから』
スキンヘッドの男が答えた。殴りかかってきた男の腕をすり抜けて藤崎は走ったが、T字路の手前で別の男が立ちはだかった。藤崎はその大男に腹を一撃され、崩れ落ちた所を抱きかかえられた。
場面が変わり、薄暗い工場が映し出された。カメラが隅の固まりに寄って行く。
横たわる人の姿。縛られた全身から口を塞がれた顔のアップになる。
円香はテレビ画面に張り付いて叫んだ。
「直人ー!」
どう見ても意識がない。
「直人、しっかりして!」
円香はテレビを揺さぶった。足音がゆっくり近付いて来る。藤崎の瞼が動いた。ぼんやりした映像から焦点が合ってゆく。藤崎の眼差しが川口の姿を捉えた。藤崎は目を見開いて、不自由な体で後退さった。
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