3.神の名を呼ぶ様に

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「あまり幸せとは言えない人生を送ってきたかもしれない。そのなかで人を愛することについては格段、不幸せな人生だったかもしれない。 けれどこの一年の初めの方にある人を好きになったのね。でもその人ったら全然かっこよくなくて、顔が。それにいっぱい話しかけてくれるのは嬉しいんだけど、言葉足らずだし声が小さいし何言ってるかわからないときもいっぱいあるの。代わりにといってはなんだけど、頭がものすっごくいいのよ。私はばかだから、授業中はその人にいつもお世話になってたわ。本当に助かった、ありがとうって感じね。 だから私は告白したんだけどフラれちゃったの。んー、残念って感じ。いや、もっと、本当はめちゃくちゃ悲しくて、友達のままでいようって言われたんだけど、違うのよ、私はあなたを愛したの、だから私もあなたに愛されたかったの、友達じゃあ意味がないのよって思った。あれは数日病むかもなあって、フラれた当初は思ったの、けど、案外そんなことはなかったのよね、私自身びっくりだった。 でも何故かって考えてみたら、私別にその人と付き合って何かしたいってわけじゃなかったの。逆にその人と付き合ったあとのことなんて想像できなかったの。つまりね、私も別にその人と恋人になりたかったわけじゃなくて、ただ、その人を愛してたんだなあって、ああいや、嘘。愛してるんだな、今も、ってわかった。 嬉しい恋よね。 きれいな恋だと思う。ついでにこれがほんとの愛なんだろうって何となく思った。 で、ね、数日前にその人がピンチだったから助けようって思ったの。そしたらこれよ、目を汚して失明しちゃって、もう何も見えない。最初は絶望したかな。彼を救って死ねたなら本望なのに、こんな姿になってもまだ生きなきゃいけないなんて最悪だ死にたいって。それに私が勝手にしたことで彼を困らしてしまうでしょ?振った奴に恩着せられて、って感じで、可哀想でしょ。 だから私、彼に見られないところで生きようって決めたの。私の世界が奪われたように、彼の世界から私を消して見えなくしてしまおうって。 それで、うちの学校に都市伝説あったの覚えてる?暗闇の中の道標ってあれ、目を瞑って黙ってればよかったんだよ。そしたら声が聞こえてきてね、例の幽霊だと思う。私の願いを聞いてきたから言ったの。 彼に呪いをかけて、私の顔を二度と見れなくさせてって。」
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