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「便りがないのはいい便り」とかなんとかと言うけれど、不穏な気しかしなかった。今日一時間目に送った文に対する返事は一日以上経った今日の午後にもあらず、俺はいい加減悲しい気持ちに滅入ってしまいそうだった。
彼女を傷つけたのはわかる。
そして彼女が「私を愛せ」と勝手な欲求をしてきて俺が断ったように俺が「仲良くしろ」と勝手な欲求をして彼女が断るのも致し方ない。
だが、理不尽とも思える彼女の冷たさに俺は何にも手がつかなかった。
ずっと返事が来ないかと気になってしまってどうしようもない。
つまるところ彼女は今日も学校に来ていないのだが、単なる風邪で二日も休むものかと気になって、遂に俺は彼女の親友である渋谷に話を聞くことにした。そもそも女子と話すのが苦手だから、特に気の強そうな彼女とは話すのが躊躇われたのだが、きっと渋谷であれば本当のところをしっているに違いない。
「渋谷、ちょっといい?」
「ん?」
彼女は振り向いて、一瞬だけ目を見開いた。驚いているというより、「お前かよ」と言いたげな鋭い非難が籠められているように見えた。
「深山木のことなんだけど」
「え?普通の風邪だよ」
聞こうとする前にさっさと答えられてしまった。今すぐにでも会話をやめたいという気持ちがにじみ出ている。
心が折れそうになるのをぐっと堪えて、俺は彼女の顔の前にスマホをかざした。
「聞いても返事がこないんだよ、ほんとに風邪な・・・」
全てを言い終える前に、何が起きたのかわからなかったが、右頬に強い衝撃が走って後ろに首が持っていかれるかと思った。俺はしりもちをついて、手に持っていたはずのスマホを探す。床に叩きつけられたスマホの画面には亀裂が入っており、先ほど顔にぶつかったのはこれで、何者かに叩かれたのだとわかった。
ジンジンと痛む頬を右手でおさえ、勢いよく血の噴き出して高鳴る鼓動を脳の奥底でぼうっと聞いた。どこか遠いところで怒号が響く。
「お前のせいで!お前のせいで!」
「渋谷落ち着け!」
「うるさい!こいつのせいで夕夏は怪我したってのに、なにこいつ!近くで見てたくせになんのつもり!何もわからないふりして、挙句の果てにはメッセージ送って、夕夏が返事を送らない?当たり前だろうが!」
頭を強く殴られたような衝撃と共に、俺は渋谷を仰ぎ見る。
彼女は憤怒に顔を歪め、
「失明したんだよ!」
そう叫んだ。
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