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「失礼します……」
会釈して資料室に入ると、堀田先生が笑顔になって手招きした。
「おお。きたきた。申し訳ないが、天井から雨漏りしちゃってな。資料が濡れる前に全部移動させなきゃいけない。ダンボールに詰めて、会議室の壁際に置いといてくれ。すまんな。先生はこれから職員会議があるから二人で頼むわ」
えぇ、二人だけ? ここの資料全部って……。
資料室を見渡しながら途方にくれる。
「はい」
大倉は文句を言うでもなくすんなり承諾して早々にダンボールを作り出した。ここで一人文句を言っても仕方がないと、僕も手を動かす。
三方の壁を埋め尽くす背の高い本棚。さらに真ん中の大きな長方形のテーブルには、収まりきらない分厚くて値段が高そうな書物がズラリと並んでいる。これ、いったい何冊あるんだよ。
「じゃあ頼むな。職員会議はだいたい二時間くらいで終わる予定だから、それより早く終わったらそのまま帰っていいからな」
黙々と手を動かしていた大倉は堀田先生が資料室を出て階段を降りる足音が聞こえなくなった途端、マスクをパッと取り「ふー」とため息をつきながら長めの前髪を掻き上げた。サラサラと落ちていく髪は見事な茶色。
そして現れる端正な顔。芸能人みたいなやつだ。ちょっと鬱陶しいくらいのキラキラ感。本当に日本人? って思うくらい不思議な色の目をしてる。
まあ、茶色なんだけど、ちょっとグレーがかったような。あんまり見ない色。鼻も高いし、余計日本人離れな顔に見えるのかも。マスクしてた時は隠れてた口もキレイな形をしてる。マスク美女なんて、たまにいるけど大倉はマスクを外してもかなりなイケメンだった。
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