雨音に隠れ僕たちはキスをした

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 部活に入ってない人間は他にもいるけど、あとは全員女子。男しか声が掛からなかったということはつまり、肉体労働ってことだ。僕だって体力なんてからっきしない。帰宅部だし、体育のチーム戦とかは常に、みんなのやりたがらない審判やキーパーを率先して引き受ける。運動とは無縁の所にいるし、体力も筋力も女子並みって言ってもいいくらいなのに。逆に、運動部の女子の方がきっと体力は僕以上。僕も除外してくれればよかったのに。  堀田先生は歴史の教科担当。大の苦手ってわけではないけど、年号を覚えたりとか単純な暗記はあんまり興味がない。手伝いをすれば内申とか多少なり上げてくれる? なんて、一回や二回の手伝いで内申が上がれば世話はない。  あぁあ……歯医者ですとか言えばよかった。  私立常星高校の校舎は四階建て。  一階は全学年の下駄箱と保健室や家庭科実習室、事務室、相談室などがある。二階には一年生の教室と職員室や校長室、図書室。三階には二年生の教室と音楽室、美術室、科学実験室、視聴覚室、四階は三年生の教室と、郷土資料室、生徒会室、会議室、多目的ルームがあった。四階には用事がないから滅多に上がらない。特別な授業で一、二回行ったきり。  空色と同じくらいどんよりした気持ちで階段を登り、通路のプレートを見ながら歩く。  あ、ここか。  郷土資料室のドアは既に開いていた。中を覗くと、「顔面焼け野原」ってわりと酷いあだ名の堀田先生と、背の高い男子生徒が立っていた。茶色いストレートヘアのマスクが振り返る。  他のクラスだけど、同じ二年生だ。長身と際立つルックスで名前くらいは知っている。  大倉……海里(かいり)だっけ?   こいつも手伝い要員か。
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