雨音に隠れ僕たちはキスをした

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「早いね。大倉君、二人分くらい役立ってるんじゃない?」 「ひとりだとしんどいけど、喋りながらだとあっという間だよ」 「志願してくれて良かったよ」 「まぁまぁ。あ、そうだ」  大倉君はズボンのポケットからタブレット菓子を取り出しケースをシャカシャカと振って口へ落とすと、そのままケースを僕の口元へもってきた。 「はい。口開けて」 「え、あぁ」  いきなりで「えっ!」と引いたけど、確かに二人分の大倉君に追いつこうと両手は本で塞がってた。僕は、大倉君の手の下にくるようにちょっと足を屈めて、上向けに口を開けた。  ポイと口へ放り込まれたのはストロベリーミント味。結構美味しい。 「ありがと」  それから何十冊もの本を棚から出し、ダンボールへ詰めを繰り返しながら、何度も何度も僕の口へタブレットを入れてくれる大倉君。いつの間にか僕も、当たり前のように口を開け、普通に貰ってた。  大倉君はチャラ男で遊んでるイメージだったし、外見からしてもっとやんちゃというか怖い感じだったけど全然そんなこと無かった。穏やかでとっつきやすいし、柔らかな表情で笑ってくれる。 「きみちゃんあとでLINEID教えてよ」 「持ってないんだけど」 「へー。珍しい。じゃあアドレス交換しよ」 「うん」  やっぱりフレンドリーだよな。初対面なのに。  僕はアドレス交換自体したことがない。クラスで話す友達のだって知らないし、しようとも思ったことがないし。だいたい学校で話せるんだから家に帰ってまで話す内容なんてないし。必要な連絡も連絡網で回すだろう。だから、クラスの子たちが楽しそうに交換しててもなんとも思わなかった。  でも、大倉君の提案になぜか抵抗は全く感じない。むしろちょっとワクワクしてる。興味なんてなかったはずなのに。いったいどういった心境の変化なんだろう?
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