スカンベイター

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 「電車内で電話はやめてくれ」  本分は、詐欺師の顔を確認しようとした。  「どういう意味です。私は理解していない」  電車内で、携帯電話を使っての通話を控えるのが通例となっている。外国籍の人物だから理解できない。    「勤務が終わって帰宅中。誤操作した」  「あなたが帰宅したら私に連絡してください。私は退職後に、日本に来るのことを考えていました」  「それはいいことです」  帰宅後、自称准将とチャットを続ける。  「あなたは結婚していますか?」  「していますよ」  「あなたは何をしているの」  「調べ物をしています。6時間後にまた出勤しなければならないので今のうちに」  「あなたは結婚していません」  「2009年に結婚している」  失礼なやつだ。  「私は57歳です。私は二人の子供を持っています。私の妻は後で」と書いてきた。さらに続けて書き込む。  「あなたは子供がいますか?」  「いない」  「なぜ」  「57歳の人に言うのもおかしいが、世の中には子宝に恵まれない夫婦もいる」  SNSで、聞かれたのはこれで二回目だ。  「しかし、私は2人の子供がいる」  「おまえ、失礼だろ。結婚したら子供を作らなければいけないのか。誰が決めた。妻は病気だ。ふざけるなよ」  事実を書き込んだ。無神経で教養がない奴だから、失礼極まりないことを送信してくる。さすが、犯罪収益金でしか生活の糧を得られないくずだけのことはある。もっとも後述になるが頭脳が明晰な者もいることを知る。  「ああ、私はそれについて残念です。あなたの妻の問題は何ですか?」  「ふざけるな。自分の子供の自慢ですか。人をからかっているのだろ」  「私は自分自身を誇りに思いません。私は孤児です」  「そうですか。努力してアメリカ陸軍の准将まで上り詰めたサクセスストーリーを自慢したいのかよ」
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