経済テロリスト

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 9月21日午前4時、銀行員からメッセンジャーに連絡があった。  「あなたは銀行から何かメッセージを受け取っていますか」  「連絡があったぞ。だから弁護士に連絡しておいた」  「彼らは弁護士と何をすべきか」  「連絡をよこせと書いてあった。口座番号を書いて送っておいた」  「あなたは今、弁護士に連絡しています」  「6時間以上前に連絡をした。弁護士からは音沙汰がない」  「大丈夫、待っていて。弁護士から聞いて、更新してください。私は、あなたがすぐにお金を得ることをうれしく思います。銀行が、弁護士からあなたに連絡するよう依頼したので」  「分かった。待っているぞ」  「大丈夫、私は今仕事に戻ります。またね」  午前5時14分、フリーメールに連絡がくる。弁護士役からだった。  「バークレイズ銀行の振込部門から、あなたに振替のための所有権証明書について、連絡するよう依頼を受けた。私はこれをあなたに提示して、トランサーの部署に渡してお金を得る。この証明書は、1万USD(アメリカドル)の費用がかかります。あなたの名前、生年月日が必要です。お金を払うべき口座を私にくれます。私は、すべてを預金所有証明書に明記しなければなりません」  予想どおりに手数料を要求してきた。日本円で約112万円。氏名と生年月日が必要だそうだ。  「ハロー、あなたは弁護士からメッセージを受け取りましたか?」  メッセンジャーに銀行員から連絡がった。  「受け取った」と返しておいた。  フリーメールには「1985年4月1日、32歳、Navid Yatsu Itai」と、記載して連絡を待った。あとは、手数料の振込先を待つだけだ。なかなか連絡がこない。先制攻撃を仕掛けることにした。舞台はアメリカに実在する銀行だ。  午前10時32分、アメリカの広域捜査機関である連邦捜査局(FBI)のフォームに、電子メールで通報した。約款として、通報に虚偽があれば罪に問われると書いてある。厳格だ。業務上、110通報はよくかける。外国の捜査機関に通報するとは思いもよらなかった。 
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