ナイジェリアからの手紙

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 「あなたは生活のために何をしていますか?」  「菓子店を営んでいます」  これからは、菓子店を営んでいる45歳で、家族、親戚縁者が誰一人としていないという設定で、接触を謀ることにした。  詐欺師から職業を聞かれる。会社員では通用しないことがあった。警備員と書いて逃げられたことがある。よく知られている職業で、調理師と書くと、必ずオーナーですかと聞かれる。金を持っているように振る舞うため、店舗経営者をかたることにした。  「わかりました。あなたの仕事にとって非常に良いことです」  「はい、ありがとうございます」  「私はあなたをとても誇りに思っています」  「名人上手と言われた父親が亡くなり、自分が1人で切り盛りしています」  「私はあなたの損失を非常に残念に思う」  「日本の損失です。高名な職人でした。日本の歴代の指導者たちもこぞって、父の菓子を口にしていました」  「わかりました。私の友人、あなたのお父さんについて聞くのはとても良いことです。あなたは結婚していますか」  子供はいるかとまで聞いてくる。始まった。既婚か独身かと確かめてきた。  「結婚していません。日々、菓子を作るための修練を積んでいました。婚期を逃したのかもしれません。私1人だけで、跡取りが必要です。歴史のある店なのですが」  「私の友達を知っていてよかった。これは私のことです。私はドイツのミュンヘンで育ちました」  何がドイツだ。どうせナイジェリ出身だろ。  「私は日本の首都、東京で生まれ育ちました」  「私は両親の中で唯一の子供でした。私はベルリンの高校に行き、それから15歳の時に、私たちはアメリカに移りました」  「私は東京の実家の菓子店で幼少のころから、菓子作りを父親にたたき込まれました」  「私はあなたが、美しい心を持ついい女であることを告白しなければなりません」  何を言い出すかと思えば、いい女と伝えるだけだった。
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