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宿
崩壊したセカイの中でも、中途半端な秩序は保たれている。
ライカとあたしはありふれた孤児だ。
そういう孤児を見てくれる、上位力持ちの優しい人もいる。
「よう、遅かったな」
へとへとになって帰って来たあたし達を出迎える、そのごつい体。
剥げた額に、筋肉が映える。
『鳥籠』ーまさにぴったりな名前だとあたしは思うーの運営者、カゴだ。
カゴは後天的な能力者だが、その筋肉がいい方向に働いたのか、『物理』属性の能力者としては最高ランクを誇る。
「何してたんだ、今日は」
「……別に、ただそこいらを、みてただけ」
「そうか、気をつけろよ」
そういって、デカイ図体をぬっと寄せて、割れるような笑顔。
……この人がいればら、少なくともここは安全。
そう思わせる信頼感があった。
※※※※※※※※※
部屋に戻ったあたし達は、そのまま疲労と共にベッドに倒れこむ。
セカイが崩壊してから、『力』によって人々の生活は思いっきり変わった。
治安の良いところ……つまり東京とか、そこらの大都市は本当に強力な『封殺力』がかけられていて、どんなに不良があばれようが、能力を、発現させることすら出来ない。
そういう町なら。
政府が、許可した、能力者だけに能力を、使わせ、防御系魔王が使える人間になら病院を、火炎魔法が使える人間になら料理屋を、といった具合に、全てを取り決めて町を、インフラを成り立たせていた。
みんなが、理想とした、科学の力と超能力が融和した、理想都市。
だから、みんな大都市に生きたがる。
あたしも、ライカも。
『力』を誇示してグールプを作り、幅を利かせるような、そういう人間じゃなければ。
でもいくら頑張ったところてま、能力レベルの低いあたし達では、都市になんてとてもたどり着繰り出していたことは出来ない。
散々歩いた。散々探した。
抜け道は、どこにも、なかった。
だから、『デウス』には期待していたのだ。
このセカイの全ての力を『キャンセル』出来るなららこれ以上ないくらい平和が訪れるだろう。
誰も力をむやみに使わず、使うべきところで使う社会。
それが全国で!!夢のようだ。
でも実際に、夢で終わってしまった。
やり場のない怒りに、あたしは顔をごしごしとこする。
なぜ、いなくなったの、神様?
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