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口笛
四方を建物に囲まれたおよそ3m四方の小さな空き地。
そこに入るには小さな幅30cm程の路地と、私が勤めている不動産会社の裏口を使うしかないのだが...
口笛
私は両手を上げて組み、ぐっと背伸びをしてコーヒーを入れた。
小さな小さな不動産会社だが、精々たまに外食で贅沢する他特に趣味の無い私にとって、
そこは丁度良い働き口なのだ。特に上を目指すこともない。
というより、その会社は社長(中年の女性)と私、そしてもう2,3人の社員で成り立っていた。
数件の不動産を扱っているだけの会社で、顧客は全て社長の知り合いだと言う。
そんな会社で働いている私はこの休憩時間を地味に楽しみにしている。
コーヒーを飲みながら外を眺めるのだ。
といっても、外にあるのは数メートル先に建物があるだけで、何か面白いものが見えるわけではない。けれど窓を開けると...何かのメロディが聞こえてくる。
口笛だ。決して上手いとは言えないが、拙いながらも、きっと演奏者が好んでいるであろう曲が聞こえてくる。
私はそれを聞くのが好きだ。
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