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そんなある日のことだった。口笛さんが空き地に来なくなってしまった。
私は楽しみを奪われて、怒りこそ湧いてこなかったが、寂寥感に苛まれた。
もちろん口笛さんはただの趣味でやっていたのだろうから、何か不都合が生じたのだろう。もし、学生さんだったのだとしたら卒業などの節目で来なくなるのも考えられる。
なんとなく理由は想像できたし、納得も出来たと思っていたのだが...
私は体調を崩して、しばらく会社を休んだ。そんなことはこれまでになかったから、同僚と社長に心配を掛けたが、数日後、出社する事が出来た。
口笛さんの不在がここまで私に影響を与えるとは思っていなかった。それほどまで、あの人の口笛は私を癒していたのかもしれない。
だから...私は自分で口笛を吹いてみることにした。
口笛なんて吹いたことが無いので、最初はとにかく音を出すことから始まった。
不恰好に口を膨らませて、ふーふーと息を吹き出す。全然鳴らない。
結局音が出るまでに1週間は掛かったと思う。一度音が出るようになると、段々コツが掴めてきて、すぐに音を出せるようになった。デスクワークだったため、これまで気にもしなかったが、
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