口笛

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 結局私の口笛は休憩時間中の社内に虚しく響いた。  その日から、私は口笛を吹かなくなった。  寂しくなったからだろうか、分からないがとにかく、どうして自分がそこまで熱中していたのかもよく分からないまま、私は口笛を吹くことを止めてしまっていた。  もうどれほどそれから時間がたったか分からなかったが、ある日のことだった。  口笛が聞こえてきたのだ。私は思わず椅子から腰を浮かせた。今日は晴れていて天気が良かったから換気がてら窓を開けていたのだが、その隙間から聞きなれた口笛が聞こえて来ていた。  私は椅子に腰を下ろして、その口笛に聞き入った。  実に久しぶりだったから、若干のぎこちなさはあったものの、その口笛は私の心に染み込んでいく。知らないうちに出来ていた穴ぼこが満たされていくようだった。  曲が終わり、気が付くと私は拍手をしていた。きっと聞こえてしまっているだろう。聞かれてしまったと赤面しているかもしれない。それでも私は手を叩いた。ピューと口笛も吹いた。本当なら指をくわえて吹くものだろうが、私はその吹き方を知らない。  だから口笛で吹いてみた。  もう長らく吹いていなかったが、ちゃんと音は鳴った。  私はしばらくぼーっとしていた。     
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