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口笛だけの関係だったけれど、確かな繋がりを感じて嬉しかったのかもしれない。
「実は...勤めていた会社を辞めてね。他の仕事を探すから...」
「あぁ...そうなんですか」
潰れたことは言わなかった。彼を余計に心配させるだけだから。
でもその言葉だけでも彼は察した様子で諦めの表情を顔に浮かべていた。
「それじゃあ仕方ないですね...」
「ええ、さよならね」
そう言うとなんだか急に寂しくなってしまった。
やっぱり会うべきじゃなかったかもしれない。
彼がやったように紙に書いてどこか見える屋根のあるところに置いておくとか、そういうことをしておけばよかったかもしれない。でも後の祭りだ。
私は思わず後ろを向いた。肩が震える。
その時、後ろから口笛が聞こえてきた。私でも知ってる。仰げば尊しだ。もしかしたら私に合わせてくれたのかもしれない。卒業ソング...別れの歌だ。
私は震える唇でそれになんとか合わせようと頑張った。上手くできたかはよく分からない。だけど、背後から拍手が聞こえて、とうとう私は嗚咽を上げて泣き出してしまった。
「さよなら」
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