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そんな声が聞こえた気がした。なんだか、震えているように聞こえたけど、きっと気のせいだと思う。私は歳だから、涙腺が緩んでるから感極まって泣いてしまったけれど、彼はまだ若いから。
それにこんなおばさんとの別れなんて惜しむはずが無いし。
でも、慰めて欲しかった...かな。まぁ若い人にそんな甲斐性を求めるのは高望みか。
気が済むまで泣いて、帰ろうと思って踵を返すと、そこにはまた紙が落ちていた。
地面には何も書いていない。あのときと同じノートの切れ端に、今度はこんな言葉が書かれていた。
『この出会いに感謝を ありがとう』
「私は言えてないのに...ずるい」
私の頬を再び涙が零れ落ちた。
その後、意外なところで私たちは再会した。
最近4人目の子供が生まれたという兄の子供自慢に付き合わされてうんざりしていると、その電話の向こう側から聞いたことがあるような声が聞こえてきたのだ。
私が兄の自慢話そっちのけで思い出していると、はっきりとその声が聞こえてきた。
『ちょ、ちょっと 服ひっぱらないでくれよっ!』
『あははははっ』
『ご、ゴメン!ウチの妹が!』
謝っているのは兄の子供の長女だったはずだ。もう成人していて最近結婚相手が見つかったのだという。私はまだ結婚していないのにお盛んなことだ...いや、結婚する気がないのだから嫌味を言う必要もないのだけど。
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