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K氏が気付くと、女性はまたすぐに出ていった。
質問でもあるのだろうか。
少し気になったが、それ以上は何も思わなかった。
しかし、その学生は毎週講義に出席するようになり、講義中も視線を感じるようになった。
「質問でもあるのかい?」
誰もいなくなった講堂で、残っていたその学生にK氏は声を掛けた。
「いいえ、ありません。それより先生」
「何だね?」
学生は意外な質問をした。
「教授にはならないんですか?」
「な、なんだ急に。教授になんか興味はない」
「もう何年と今の肩書きですね。教授には先を越されたみたいで」
「譲ったんだ」
K氏の気持ちを察したように、学生は提案してきた。
「ならせてあげますよ、教授に」
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