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悔しくて、悲しくて、やり場のない憤りを感じて、すごく、すごく、心が苦しかった。
目頭が熱くなって、涙がすうっと頬を滴り零れた。
どんどん、涙が溢れて、雨と結合して、地面へと流れていく。周りの雑音と、大雨の音が、ひどく不快に感じた。自分の叫びが、想いが、この雨に浸透しているようだった。
止まらないんだね、こんなに困ってるのに。
そのとき、声が聞こえた。優しくて、暖かい声が。
後ろを振り返ると、そこには背の高い、雨傘を差した男の子がいた。見覚えがある。というか、よく知ってる。小学校からの幼なじみの優真だ。
「よう、真命。相変わらず、雨女だな、お前。大丈夫か?」
「……優真。あんた、この状況見て大丈夫なわけないでしょ。ちょっとは考えてよ、バカ」
優真は、睨み付けた私を見て、頭を掻くと、薄っぺらい服のようなものをバッグから取り出す。そして、それを私の目の前に差し出した。
「……何これ」
「見てわかんねぇか?合羽だよ、雨合羽」
一瞬、何のことを言ってるのか分からなくて首を傾げる。渡された物を広げてみると、分かった。
「……レインコート?」
「種類によってはポンチョとも言う。フード付きだ、これ使えよ」
「ありがと……でも、これ優真のだよね、私には大きすぎるんじゃ……」
返そうと思って、手を差し出すと、優真はそれを制止した。
「大丈夫、お前の大きさだから。ほら、お前、いつも雨の日、傘を忘れるだろ?でも、雨合羽なら、着てるんだから、忘れないだろうしな」
「いや、それはそうだけど。でも、なんで私の大きさのをあんたが持ってるのよ」
不審に思って、優真と距離を取る。
「バ、バカ!変なこと考えんじゃねぇよ!今日は雨だって、昨日、天気予報でやってたからな。どうせ、お前がまた傘を忘れると思って、昨日デパートで買ってきたんだよ!それに……お前が、どれくらいの背かなんて、分かるさ。ずっと一緒に育ってきた幼なじみなんだからな。目線の高さがずれたときから、お前は小さいままだしな」
「し、失礼ね!私だって、背は伸びてるし、小さくはないわよ!あんたが、勝手に一人だけ大きくなってんでしょうが!」
大声で言い返す、私を優真は分かったから早く着れと促す。それも、目線を合わせずに、私の制服をちらちらと見てくる。理由が分からなくて、自分の制服をちらっと見る。
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