雨傘と雨合羽

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雨傘と雨合羽

「大嫌い……」  二階の教室の窓から外を眺め、そう呟く。  どんよりとした雲に覆われた薄暗い空。  私の嫌いなもの。  それは、雨。  雨の日はいつも嫌いだった。外で遊べないとか、何だか気分が憂鬱になるとか、そんなんじゃない。理由は、もっと単純で、くだらないこと。  私は雨女なんだ。それも、とても深刻な。  別に雨女だからって、それ自体はそれほど気にしてはいない。  私は、あまり運動が得意なタイプではないから、むしろ体育の授業なんかは都合がいい。風邪引いたら大変だから持久走も無くなるし、暑い中、体育祭の行進の練習をすることも無くなる。  でも、唯一問題がある。私は、雨の日に限って必ず、傘を忘れるのだ。だから、私は、雨が嫌い。  友達が、傘を貸してくれることもあるけど、今日は最悪だった。清掃委員会に所属している私は、理科室の掃除に手間取ってしまって一時間も遅くなってしまった。  部活をやってる子は、体育館で練習中だし、帰宅部の子は、直ぐに帰ってる。先生も定例会って言うのかな。先生同士の集まりで、忙しそうにしている。  小学校から、高校一年までのこの十年間。一度も、雨を好きになったことはない。  校舎の出入口前で、強く地面に叩きつける大雨を見て、私は考えた。  帰ろうかな。どうせ、濡れるだろうし。……うん、決めた。帰ろう。悩んでいても、仕方ないよね。  そう決心して、私は、走って校門まで向かった。家はさほど遠くはない。学校から、歩いて十数分くらいだ。走れば、直ぐに着くはず。駆け抜ける度、水溜まりがちゃぽんと音を跳ねる。靴の中は、とっくに湿っていたけれど、歩みを止めない。これくらいなら、構わない。  後ろからトラックの音がした。慌てて、道の端っこに寄ったとき、スピードを出していたトラックは、大きな水溜まりの前を通過した。  跳ね上がった水の噴水が、飛び散るように私に覆い被さった。 「きゃっ!!」  思わず、声を上げた。気づいたときにはもう遅くて、全身を水浸しになってしまった。  最悪。ほんと……最悪。だから、雨は嫌いなんだ。  私は、拳をぎゅっと、強く握って伏し目になった。  バカだ。雨の日には良いことなんて起きない。そんなこと分かっていたはずなのに、無理して帰ろうとするから、こんなことになるんだ。  
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