曇り夜裂く月光

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「は、はじめまして。わたし、えと、沙上沙綾です。その、ずっとりこりんのファンで、わたし。えーと、だからアイドルになっちゃいました! よ、よろしくお願いしますっ!」  出会ってすぐ、いきなりこんな挨拶をされた時は、私は彼女のこの態度を完全に演技であると思っていた訳で、こいつは私にこんな媚を売ってまでトップへのし上がりたいのかと吐き気がする思いだった。  けれど、彼女に行く先々に付きまとわれ、話しかけられる度に、彼女のその思いが本物であることを知った。 「りこりんはですね、完璧でも完全でもないんですよ。でも、そうあろうともがく姿がですね、最高なんです!」 彼女に私の何がいいのかを問うた時の答えがこれだ。  ただ馬鹿にされているだけのような気がしなくもないけれど、この言葉を発した時の彼女の目つきはいつになく真剣で、月夜でさえ明るく光る一等星のように綺麗だった。だから、私は何も言い返さず、そんなものかと思ったものだ。  今思えば、確かにこの言葉は至言かもしれない。     
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