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「さあやテレパシーです」
なんだかよくわからないポーズを取りながら、彼女はキメ顔でそう言った。意味不明だが、彼女のファンは彼女のこういうところが好みなんだとか。まあ、わからないでもない。
「はあ?」
「まあ、そういうわけです。次、行きますよ!」
そういう彼女に連れられるがまま、私は園内を練り歩いた。
そして、終園時間となる頃、私達は一人の小さな女の子に出会ったのだった。
少女はどうやら迷子になってしまったらしく、一人でぽつんと泣いていた。
そんな子供を沙綾が見逃す訳も無く、声をかけてみたのだが……。
「だめでしたー。せんぱーい。わたしの力では彼女の心を開くことはできませんでしたー。わたし、アイドル失格ですぅー」
この様である。
泣いている少女をあやすつもりが、自分が涙目になって帰ってくるとはこれいかに。まったく、自分で解決できないような問題には首を突っ込まないで欲しいものだ。
そう思っていると、なにか縋る様な視線を沙綾がこちらへと向けていた。
言いたいことはわかる。恐らく彼女は自分の代わりに少女の話を聞いてあげて欲しい、とかなんとか思っているのだろう。いやはや、勘弁して欲しい。誰がそんな一銭にもならないこと……。
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