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カスパールが銃口を向けると、
スズリは一度横薙ぎに刀を振るい、
ひょう、という風切りの後で正眼に構え直す。
「やってみな。
見せてみなよ、お前さんの固有兵装を」
カスパールの煙管からシャボンが浮かび、スズリの周囲を逃げ場なく取り囲む。
「傾け、アヴァロンの影。
出し惜しみしてっと、見せ場が無いままおっ死ぬぜぃ」
「……ああ、それならつい、先ごろ。
銃口が睦殿を向いていなかった故」
スズリの顔に広がる、悪意ある笑み。
「ひょっとして、見逃したでありますか?」
「……何?」
傾げた首が、身体の中心から、ずれた。
「――壱の型、傀儡堕とし。
失敬、どうやら順序を違えたようであります」
斬り落とされた頭部は、大穴の中へと吸い込まれ、
錦の羽織が、その場にどしゃりと崩れ落ちた。
まるで糸を切られた操り人形のように。
「固有兵装、名は《無銘》、その第二十五番。
なんのことはない、すこーしばかりよく伸びて、すこーしばかりよく斬れる。
ただそれだけの、しがない能力でありますよ」
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