第二幕「錫李」

19/19
130人が本棚に入れています
本棚に追加
/291ページ
 カスパールが銃口を向けると、  スズリは一度横薙ぎに刀を振るい、  ひょう、という風切りの後で正眼(せいがん)に構え直す。 「やってみな。  見せてみなよ、お前さんの固有兵装(のうりょく)を」  カスパールの煙管からシャボンが浮かび、スズリの周囲を逃げ場なく取り囲む。 「(かぶ)け、アヴァロンの影。  出し惜しみしてっと、見せ場が無いままおっ()ぬぜぃ」 「……ああ、それならつい、先ごろ。  銃口が睦殿を向いていなかった(ゆえ)」  スズリの顔に広がる、悪意ある笑み。 「ひょっとして、見逃したでありますか?」 「……何?」  傾げた首が、身体の中心から、ずれた。 「――(いち)の型、傀儡堕とし。  失敬、どうやら順序を(たが)えたようであります」  斬り落とされた頭部は、大穴の中へと吸い込まれ、  錦の羽織が、その場にどしゃりと崩れ落ちた。  まるで糸を切られた操り人形のように。 「固有兵装、()は《無銘(むめい)》、その第二十五番(No.25)。  なんのことはない、すこーしばかりよく伸びて、すこーしばかりよく斬れる。  ただそれだけの、しがない能力(ちから)でありますよ」
/291ページ

最初のコメントを投稿しよう!