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第三幕「薔薇と誓い」
「ついでにあたいの帽子も拾っちゃあくれないかい。借りもんなんだ」
スズリの左手にぶら下げられたまま、カスパールの生首が口を利いた。
テンガロンハットは大穴の縁、剥き出しの鉄骨に引っかかっていた。
「うわ、しゃべった!?」
「しゃべりもするさぁ、この鬼畜ド腐れ外道がスリープさせてくんないからねぃ」
スズリの指からパチパチと青い火花が爆ぜる。
コアから切り離された頭部に無理やり通電して、電力不足によるスリープを妨げているのだ。
驚く睦の頭に、スズリがつま先で跳ね上げたテンガロンハットがフワリと乗る。
「ドーモ、鬼畜ド腐れ外道であります」
「宣言通り、鼻でも削いでみるかい」
カスパールの言葉に、スズリは睦に視線を送る。
睦は首を強く横に振った。
「趣味じゃない」
「良かったでありますなぁ。我が主は拷問がお嫌いのようだ。
だが貴様には吐いてもらわねばならない事が腐るほどある」
スズリはカスパールの首を掲げ、その額を嘴のように軍帽のつばで小突く。
「護送対象を目の前で殺され、ドロシーはさぞや無念でしょうなぁ。悲しいでしょうなぁ。
己に持ち合わせの無いぶん、他人の心ばかりがよく分かる。
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