神と姦淫

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「俺達は愛し合っています。それが大前提。それだけがあればいい」 「母親だから? 貞操観念なんて、無駄な考え方です。俺にかしずいて子供さえ出来なきゃいい。いくらでも男を作ればいい」 「不倫はいけない? 社会通念なんて誰かが作った後付けだ。その枠の中で馬鹿共が声高に正義を主張する。常識なんて一夜で変わる。自分に何の迷惑もかかりゃしないのに」 「クリスチャンなのに? 神は『姦淫するなかれと』いう。それは配偶者が苦しむからだ。俺は苦しまない。むしろ大歓迎。よその男に見向きもされないなんて、そんな女を抱く気にならない」 「あなたのしたことは、犯罪だ。不倫よりよっぽど悪い愚かな行為。それで俺が喜ぶとでも……思ったの?」  東さんは私を蔑むように笑う。私はただ天を仰ぐ。  ああ、『神様』  あなたは本当に、いるのでしょうか――。
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