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「綺麗ね。そのコスモス、どうしたの?」
僕が持つコスモスを見た姉が、少し首を傾げた。
「女の子がプレゼントしてくれたんだ」
何がなんだか分からなかった僕は、そのままのことを言った。
「ふーん」
姉はいたずらそうに目を細める。
「そのコ、あんたに気があるんじゃない?」
「まさか」
「だって、ピンクのコスモスの花言葉は『乙女の純潔』よ。でも、ただ純潔ってだけじゃないの。乙女が誰かを一途に想う、純粋な恋心を表しているのよ」
「えっ!」
知らなかった。
まさか、もしかして……美那ちゃんが僕のこと、好き?
*
次の日の学校。
僕と目が合った美那ちゃんは、やはり赤くなった。
僕も胸の中がドキドキと熱く鳴った。そのドキドキが聞こえないように、できる限りいつも通りに彼女の元へ行き、本を一冊渡した。
「……はい」
「これ……若草物語?」
「うん。美那ちゃん、ずっと読みたいって言ってたでしょ。」
「ありがとう!これ、ずっと読みたかったの」
彼女はそうつとめてか、いつもと同じ反応だった。
それからも、僕達の関係は今までとそう変わったということはなかった。
ただ、僕の方から積極的に本を貸してあげたりしたし、目が合ったらお互いに少し赤くなるようになった……それだけだった。
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