チョコレートコスモスの花言葉

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 秋も終わりに近づく頃。  一緒に帰る帰り道で、美那ちゃんは僕に顔を向けてにっこりと笑った。 「私、城命中学校を受験することにしたわ」 「えっ、そうなの?」  城命中学校は、大学までエスカレーターで進める名門の共学校。僕の住む地域で中学受験をするコは、大抵目指している学校だ。 「ええ。奏は、どこを受験するの?」 「僕は……」  本当の事を言おうか、少し迷った。 「立洋中学校」  他県の、男子進学校だ。 「えっ、城命中学校じゃないの?」 「うん。僕、将来獣医さんになりたいんだ。城命中学校だったら大学までエスカレーターだけど、獣医にはなれない。立洋中学校は遠いけど、難しい大学への進学率が凄く高いんだ。だから、僕は……立洋中学校を受験する」  僕は自分の決意を話した。 「そう……分かったわ」  美那ちゃんは寂しそうに、澄んだ瞳を下に向けた。  次の日。  帰りの下駄箱で美那ちゃんは僕に黒いコスモスを渡した。 「これ……」 「私からの、プレゼント」  美那ちゃんは、寂しそうに眉を下げて微笑んだ。 「お互い、絶対に志望校合格できるように頑張ろうね!」  少し潤んだ瞳でそう言って走り去った。 * 「あんたの恋、終わったね」  黒いコスモスを見た姉は溜息を吐いた。 「黒いコスモスはチョコレートコスモスって言うんだけど、その花言葉は、『恋の終わり』。ああもう、バカだねぇ。そのコと同じ中学校受けたらいいのに」  終わった……僕の恋は。  塞ぎこむ僕を、チョコレートコスモスの仄かなチョコレートの香りが包んだ。  でも、受験前の時期に落ち込んでばかりもいられなかった。僕はそれから彼女のことを忘れるくらいにがむしゃらに勉強して、そして、志望校に合格した。  美那ちゃんも彼女の志望校に合格した。  実質的に僕達の関係は終わり……僕達は『失恋した』んだ。  お互い、それぞれの道を歩み出した。
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