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チョコレートコスモスの花言葉
「ねぇ、奏(かなで)。今日の放課後、ちょっと付き合ってもらっていい?」
美那(みな)ちゃんに言われて、ドキっとした。
僕、奏は勉強しか取り柄のない小学六年生。勉強こそクラスで、いや、この学年全体で誰にも負けない成績なんだけど、その他のことは全然ダメ。
こないだの運動会なんて、リレーで走っている途中で僕が転けたせいでうちのクラスが負けて、みんなから怒られた。
一方の美那ちゃんは、成績優秀、スポーツ万能な学級委員。小学生にしてはすごく大人びていて綺麗で、クラスのみんなの憧れの的だ。
そんな美那ちゃんだけど、何故か僕によく絡んでくれる。僕が持っている本を借りてくれたり、皆で家に来た時には散らかり放題の僕の机を綺麗に整理整頓、片付けてくれた。
今日の放課後……どうしたんだろう?
待ちに待った放課後。
美那ちゃんが僕と並んで歩いてくれている。
皆のひそひそ声なんか全然気にしていない。二つ括りの茶色がかった髪から、仄かにシャンプーの香りがしてドキドキする。
「ねぇ、何処に行くの?」
ドキドキを紛らわすために、僕は緊張した口を動かした。
「こないだ、いい場所を見つけて。奏と一緒に行ってみたいの」
そう言って俯いた美那ちゃんの頬は、ほのかに赤くなったような気がした。
*
「すごい、綺麗……」
僕達が辿り着いた場所は、一面のコスモス畑。
色とりどり、赤、白、ピンク、黄色のコスモスが夕陽に向かってキラキラと光っていた。美那ちゃんは、やはり頬を赤く、俯きながらしゃがんでピンクのコスモスを摘んで僕に渡した。
「……はい」
何がなんだか分からない僕は、彼女から差し出されたそれを受け取った。すると、美那ちゃんは上目遣いの綺麗な瞳を僕に向けた。
「私からの、プレゼント」
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