プロローグ

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その青年はさんざん苦悩した結果、列車に乗ろうと決意した。 「子供じゃないんだぞ!」 「頑張っているのは分かるけど、それだけなんだよね」 「会話がかみ合わない。まるで宇宙人と話しているみたい」 「いつまでたっても同じミスをして。同じ返事は聞き飽きた」 誰もいないプラットフォームに停車している重厚な豪華観光列車を見ながらリュックサックを背負う彼は、ぽつりとつぶやいた。 「もう、俺はただ辛いだけの人間関係に押しつぶされるのはこりごりだ…」 その少女は血統に振り回され、ひなびた廃旅館とシャッター街となった小さなアーケードを押し付けられた。 「あの親殺しの娘か」 「おそらく残虐な性格も受け継いでいるだろうよ」 「格を落とされてもプライドは三人前」 「厄介なものを押し付けることができてよかったよ」 古びた廃旅館にあるダニの温床になりつつあった部屋の一角で、彼女は小さな膝を抱きしめた。 「ひもじい…ひもじいのじゃぁ…ううっ…」 努力をすれば何でもできる。そして報われる。この世はそうではなかったのか。そんな世界に見切りをつけられた二人はここ、耆南の地でどんな物語を紡いでいくのだろうか。
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