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以前聞いたのと同じ声がして、私が辺りを見回すと、そこにはやっぱり彼女がいた。
改めて見ても、記憶に違わず彼女は美しかった。
青く光る鱗は一枚一枚濃淡が違って、それが光に煌めいて見える。
空中に浮かんでいるのか、ここは本当は水で満ちているのか、私には判断がつかなかった。
「今日は迷子じゃないよ」
私が言うと、彼女は呆れた顔をした、ような気がした。魚なので表情はよくわからないのだが、雰囲気がそう感じさせる。
「それなら、どうしてここに来たんだい?」
「わからない。水たまりを踏んだらここに居たの」
そう正直に言ってから、私は少し不安になった。
「どうしよう。私、今日は一人だった。どうやって帰ればいいのかわからない」
すると、彼女も少し考えてからこう言った。
「そのうち、帰れると思うよ。お前の居場所はここじゃないから。少し様子を見てみよう」
彼女はそう言うと、私が元の世界に帰れるまで、一緒に時間を過ごしてくれた。
その時は帰り方のコツがわからなくて、二度と元の場所に帰れなかったらどうしようと不安で仕方がなかったけれど、その不安が膨れ上がって泣きそうになった時、気付いたら私は元の通学路に居て、片足は水たまりに入り込んでいた。
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