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三回目は、自分からここに来ようとして水たまりを踏んだ。
何度か試して分かったことは、水たまりを踏んでも必ずこの世界に来られるわけではない、ということだった。
雨が降る度に水たまりを踏んだけれど、なかなかこの世界には来られなくて、ようやく来ることができたのは諦めて水たまりを避けるようになってからだった。
たまたま、勢いよく水たまりを踏んでしまった私は、気付いたらここに居た。
「今度はどうしたんだい?」
暫くすると、また彼女が現れた。
「久しぶり。ずっとここに来たかったのに、全然来られないから諦めかけていたの。会えて良かった」
「前回から、そんなに時間はたっていないと思うけれど。それに、人の子がここに長時間居るのは良くないんだ」
彼女は私を心配してくれているようだったけど、私は再び彼女に会えたことが嬉しくて、そんなことは気にならなかった。
私は彼女としばらく話して満足すると、そろそろ帰るねと言って目を閉じた。
「帰り方を覚えたのかい?」
彼女が感心したように言った。
「うん。向こうに、帰りたいって強く思えば、帰れるんだと思う」
私は目を閉じて、元居た場所からの帰り道や、両親、友人たちのことを思った。
気が付くと私は、通学路に一人立っていた。
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