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それからも、私は何度かこの世界に来ている。多くても一年に二回。その間隔は、段々と長くなっている。
私は久しぶりに会った彼女に言った。
「久しぶり。相変わらず、あなたは綺麗ね」
「ありがとう。私はついこの間もお前に会った気がするよ」
私と彼女では流れる時間の感覚が違うらしく、彼女はいつも、この間私に会った気がすると言う。
「でも、今回は本当に久しぶりだよ。三年は此処に来ていなかったから。何だか大人になるほど、ここから遠ざかっていくみたい」
「それでいいのよ。ここは本当は人の子が来る場所じゃないんだから。いつかきっと、ここに来たことも、私のことも忘れられる」
「そんなの嫌だ。忘れたくない」
私が幼い子供のようにそう駄々をこねると、彼女が笑ったのが分かった。
「仕方ないでしょう。大丈夫よ、お前が忘れても、私は覚えているわ」
彼女の言葉に、私は嬉しくて表情を緩めた。
「本当に? 本当に覚えていてくれる?」
「ああ、本当だ。ここに迷い込む人の子なんて珍しいからね。忘れたくても忘れられないよ」
「そっか。……それは、ちょっと嬉しいな」
「そうだろうね。顔を見ていればわかるよ」
そう言う彼女の声は優しかった。
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