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本編
女はまるで枯れ木の様だった。
老女ではある。けれどどこが枯れ木の様かと聞かれるとにわかに答えにくい。
その女が家に訪ねてきたのはもう夜半に差し掛かろうとしてた頃でいっそ寝た事にして無視してしまおうかと思ったくらいだった。
けれど、ドアの向こう側からする気配がおかしい事に気が付いて置いてある剣を取ってドアに近づく。
足が碌に動かないといってもそれでも間合いが近ければやりようはある。
柄に触れながらドアを開けるとローブでほぼ全身を覆った小柄な人間が立っていた。
物売りのつもりだろうか籠を持っているが中身は空だ。
「ばあさんがこんな時間に何の用だ?」
老女の纏っている空気がおかしいのだ。
戦場で良く感じていた感覚、悪しき物の気配を纏った老婆はこちらがすごんで見せても気にした風が無い。
昨年末に除隊した軍ではよくこういうものを見た。非科学的だと思ったがそういうものと割り切らなければ戦闘はできないし、人も殺せない。
ようやく、戦争が終わったのだ。だからもう、こういうものは見たくは無かった。
「……貴方に差し上げたいものがあってまいりました。」
その声を聞いてどこかで聞いたことのある声だと思ったが思い出せない。
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