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「記憶力はあると思うんやがなぁ。……この件は思い出しにくいな」
「そうか……。ありがとう」
「なんや。何ぞ思い出したんか」
「ううん。そうじゃないんだけど。なんていうかね、余りにもあの場の雰囲気に違和感が無さ過ぎて」
「なるほどな」
春ばぁ、何やら考え込んでる様子。
何か難しい事聞いちゃったのかな……。
「……必要がある事なら、いつかわかるやろし、必要が無ければ思い出す事もないやろ」
「うん、そうだね。まあ、気にしないでおくよ。不快で気持ち悪かった訳じゃないからおっけー」
「……あんまり、思い込まんようにな」
「了解!」
そう返事はしたものの。
何かが、心の奥の奥でざわざわする。
手が届きそうでいて届かない所にある、そんな何か。
あと少し……、もうちょっと……、そこで途切れる夢みたいに。
『奈津様』
また、呼ばれて振り返れば今度はエミさん。
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