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『まずは、私の一番外側の記憶が事故に遭った場所へ出向こうかと思います。運転していた男がトンネルの中に何を見たのか、確かめに……』
「了解。ご一緒します」
一番外側の記憶、それはつい最近までこの世で活動していた映美さん。
彼女が亡くなった場所へ行く……。そんな約束をして、解散した。
色々と、辛い事実と向き合わないといけないかも。そんな予感で身体が満たされて行く。
不安とはまた違う、落ち着かない感覚。
それと、映美さんのクセが少しわかった気がする。
違う時代を生きた姿ごとに、少しずつ話し方が違うんだ。
時々衣装替えしないまま、話し手だけ変わってたりもして。
解散前に打ち合わせしたのは、高校生の映美さんだったと思う、多分ね。
まーちゃんの家は広いので、どこにでも寝かせてもらえる。
お酒で潰れたおっちゃんは座敷にこのまま放置するらしい。
けど、ちょっと普通じゃない光景。
仏壇の前で隣のおっちゃんが鼾をかきながら肘枕でぐうぐう。
そのおっちゃんを、ぐるりと囲んだご先祖様たちが、正座してひそひそ話しながら熱心に見ている。
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