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どうやら、おっちゃんの腕から背中にかけて描いてある、桜吹雪とお魚のミスマッチでシュールな絵が気になるらしい。
私もはじめてまじまじと見たけど、どうやって描いてあるんだろう。
転写シールじゃなさそうだね。
青とか赤とか、結構綺麗。
《水もないのに生きとるぞ》
《どうやって餌やりするんじゃ?》
《この季節に桜とは風流じゃのぉ》
《季節外れのお花見かえ》
《おお!花見だ!酒だ酒!!》
《あなた飲み過ぎよ!》
《鯉の洗いが食いてぇな》
《おい、釣るぞ……竿もってこい》
とりあえず、何かあればひとしきり騒ぐ酒井家のご先祖様。
灯りを落とし気味のこの部屋で見てると、おっちゃんの呼吸に合わせて、背中の鯉がゆったり泳ぎ、桜が舞い散るような錯覚を起こす。
なるほど、それを見てたんだね、ご先祖様たち。
目が覚めたらおっちゃん、びっくりするだろうな。
視界にぐるっとお遍路姿の幽霊が……。
あ。
多分視えないんだった。残念。
ちょっと気になったけど、わたしと茉莉ちゃんはまーちゃんの部屋に泊めて頂くことになったから、顛末は見届けられない。
かなり残念。
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