眞留真一の破壊的日常

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突然の質問だが、皆さんは気に入らないものが現れた時、どうするだろうか。 自分の中で適当に理屈をつけて誤魔化す等という考えは素晴らしいがそんなことが出来る人間は滅多にいないし、結局は不可能な話だ。 或いは、真っ向からぶつかっていくという考えもあるかもしれない。何も考えていないようでいて賢いやり方だと俺は思う。どんな状況においても、一番楽なのは傍観者だと言い切れる。そんな中で敢えて突っかかっていくというのは、非常に勇気のいる行為だ。 はたまた、相手にしないという人間もいるだろう。一見すると最も大人らしく、スマートなやり口だ。小学校の教師などは皆、口を揃えて「相手にするな」だとか「言い返す必要はない」などと言う。しかし、何かを意識するなと言われた時点で、意識の大半はその「何か」が占めていると思う。嫌いな人間に意識を占有されると言うのは、あまり気分の良い話ではない。 さて、肝心の俺はどれに該当するか、と言う話になるのだけれど… 俺の場合は事例が少し特殊だ。 俺にはある特技がある。それも、嫌いな人間へ対応するために作られたかのような特技だ。これを見た人間は、皆 ー 後に反例が現れるのだが ー まぁ一様に虚ろな表情を浮かべる。そうやって虚無に呑まれていく人間の顔をもう何度も見てきた。 そう、何度も。 俺は疲れ切っていたのかもしれない。そりゃあそうだ、人が奈落へ落ちていく様子を幾度となく目の当たりにしていれば、気が滅入るのも当然だ。 だが、気付いた時には遅かった。 異質なものほど、他人の興味を惹きつける。 俺は少なからずこの十数年の人生の中で、自分と同じ特技を持った人間を見たことが無かった。 結果的には、犯した罪の数々が、報復という形で俺の心臓に突きつけられることとなった。 さて、それ以来俺は特技、いや、能力を使うのを止め、日々を過ごし、それなりに嫌いな人間とも出会い、やり過ごして、結局は大嫌いだった教師の言う、「相手にしない」と言う言葉に沿って生きていくことになった。世の中の大多数の人間と同じように…自分は特別でも何でも無かったってことさ。 しかし、やはりと言うか何と言うか、型通りの日々の退屈なことこの上ない。俺はいつしか、「外れた」生き方を懐かしむようになった。 随分と前置きが長くなってしまった。 最後にこれは、「任意の人間を削除する能力」を持つ俺、眞留真一の物語である。
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